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医療法人社団晴山会おしきり眼科

院内感染予防対策マニュアル(2007年)

(ウィルス性結膜炎編)

 

1.対象病名:アデノウィルス結膜炎(流行性角結膜炎、咽頭結膜熱)

           エンテロウィルス結膜炎(急性出血性結膜炎)

2.対象者:上記病名の患者さん及び疑いの患者さん、医療従事者、訪問者

3.感染経路:結膜炎に関しては接触感染による

4.診療環境の整備

  アデノウィルスは、自然乾燥した場合でも10日以上も元の感染力を維持する場合があります。したがって、医師や医療従事者の手指や検査器具がウィルスに汚染される可能性があります。その為、日頃から正しい滅菌や消毒を実施する必要があります。

@.滅菌:当院では、高圧蒸気滅菌を行う。

A.   消毒:当院では主に消毒用エタノールと紫外線照射を行う。

アデノウィルスに有効と考えられる消毒薬と適応、アデノウィルスに有効と考えられる消毒薬は日本眼科学会雑誌:ウィルス結膜炎のガイドライン、第6章院内感染対策;表1・2を参考とする。

B.日常診療における滅菌・消毒方法:基本的には、ウィルス結膜炎が疑われる場合は、不必要または緊急を要しない検査・処置・手術は出来るだけ行なわないこと。

手術器具・硝子棒・睫毛セッシなど:使用後に滅菌する。
(涙洗針は27Gディスポを使用する)
眼鏡枠、検眼レンズ:消毒用アルコールで清拭、その後紫外線照射を行う。
接触型レンズなど:十分に水洗してから消毒薬に漬ける
スリット台、眼底観察用レンズなど:消毒用アルコールで清拭(2度拭き)
ドアノブ、待合室の椅子、手すりなど:消毒用アルコールで清拭、定期的な清拭

C.手洗い:
 手洗いの励行がアデノウィルス結膜炎に限らず院内感染防止のための基本であることを十分に認識するべきである。 消毒薬を用いて十分な流水中で洗浄を行なう。水栓の開閉は手首かペーパータオルで行う。手洗い後はペーパータオルで完全に水分を除去する。その後消毒用アルコールで拭くかウェルパスを手指になじませ乾燥させる。手袋の使用も有用であるが、この場合でも手洗いは必須である。手洗い後は、患者さんの触れた眼鏡、診察券、金銭などには触れないこと。

D.点眼: 点眼瓶が汚染されると長期にわたり感染源になる。
 睫毛などに触れないように正しい点眼方法についてスタッフや患者さんに徹底する。検査用点眼薬などは短いサイクルで新規なものに交換する。

E.待合室:感染源になりうる雑誌、書籍の削減。

5.早期発見
  @.問診の重要性:診察前の適切な問診は、第1のスクリーニングとなる。

   受付で、疑わしい時は看護師に連絡して、看護師が問診・記入すること。

   患者さん本人が記入しないこと。 

  A.キャピリアアデノアイ:キャピリアアデノアイは、臨床の場におい

て有用な診断キットである。特異性は100%であるが、感度は60〜

70%である。

 使用に際しては、綿棒で十分に結膜を擦過すること、綿棒の擦過物を確

実にチューブ内の溶液に抽出すること、検査を行なうことで周囲の環境

に汚染を広げないことなどに留意する。

B.潜伏感染者:潜伏感染者から本当に感染するか否かはまだ不明である。

6.感染者への対応

アデノウィルス結膜炎患者さんは原則として予約の上、最後に診察する。

午前は11時30分、午後は6時、土曜日は12時30分に電話で受診時間を確認すること。待合室ではなく、暗室の前の専用の緑の丸椅子で待って頂く。来院時に、ウェルパスで手指を消毒して頂く。
家族に伝染して、家族が受診する時も電話で予約すること。
アデノウィルス結膜炎は非常に感染力が強いことを患者さんに十分に説明した上で対応する事。

7.院内感染発生後の対策
  当院に通院中の患者さんや医療従事者、訪問者で1週間に5人以上のアデノウィルス結膜炎が発生した場合や
  当院受診後4
〜10日でアデノウィルス結膜炎が発症した場合(特に流行している時期)は、院内感染が発生したと
  判断する。


 @.院内感染の状況把握:
  1)アデノウィルス結膜炎の確定診断

 アデノウィルス結膜炎の確定診断を行ない、実際の感染者数を確実に把握しておかなければならない。
その為には臨床所見からの判断、キャピリアアデノアイ、PCRによるウィルスDNAの検出、ウィルスの分離・培養同定などが必要である。


2)感染者の状況把握
   院内感染が発生した場合、感染者1人1人の過去の経緯、担当医師や看護 師、行なった検査内容、所見などに
  ついて徹底した調査が必要である。

 
 
A.拡大防止
   徹底的に消毒を行う。再開に際しては、新しい白衣を着用し、それまで白衣のポケットなどに入っていたボールペンなど
   は全て破棄し、破棄できない手帳や名札などは紫外線照射を行なう。

  外来で院内感染が発生した場合、患者数によっては4〜7日休診とする。その間、徹底的に消毒を行なう。
   スタッフが発症した場合は、直ちに綿密なウィルス学的検査を行ない、その後結膜炎症状が完全に消失するま
  で(10日〜2週)休職とする。

   
 
B.患者さんへの対応
   アデノウィルス結膜炎の院内感染が生じていることを伝えた上で、アデノウィルス結膜炎自体が他の疾患や手
  術後に影響しないことについて十分説明し、また新たな感染拡大防止に協力してもらう。

  今後の対応(外来受診の予定など)についての確約を行ない、更に患者さんからの問い合わせなどにつ
  いては同じ担当者となるようにして、誠意をもって対応する事。

  
 
C.保健所との協議
   今後の対応などについて、多摩立川保健所と緊密に連絡を取り、相談し、感染拡大防止に努力する。

多摩立川保健所 TEL.042-524-5171

ひまわり(夜間・休日) 03-5272-0303